運動と生活習慣病予防

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生活習慣病を予防する運動習慣|有酸素運動・筋トレの効果と始め方

運動と生活習慣病予防

生活習慣病(高血圧・糖尿病・脂質異常症・肥満など)の予防と改善において、運動は食事療法や薬物療法と並ぶ重要な柱です。近年の大規模研究やガイドラインでは、運動の種類・量・頻度について具体的な推奨が示されており、「どのくらい動けばよいか」が以前よりも明確になっています。この記事では、最新のエビデンス(科学的根拠)にもとづいて、生活習慣病予防のための運動習慣をわかりやすく解説します。

推奨される運動量の全体像

American Heart Association(AHA)やAmerican College of Cardiology(ACC)のガイドラインでは、成人に対して以下の運動が推奨されています1-4)

  • 有酸素運動: 週150〜300分の中強度、または週75〜150分の高強度
  • 筋力トレーニング: 週2回以上、主要な筋群を対象に

中強度の有酸素運動とは、早歩きなど「息がはずむが会話はできる」程度の運動です。高強度はジョギングや坂道の早歩きなど、息が切れて会話が難しくなる程度を指します。まずは週150分の中強度有酸素運動(たとえば1日30分×5日の早歩き)と、週2回の筋力トレーニングを目標にするとよいでしょう1,3)

有酸素運動の効果

有酸素運動は生活習慣病のさまざまなリスク因子を改善します。AHAの2026年の声明では、有酸素運動によって収縮期血圧が平均4 mmHg、拡張期血圧が3 mmHg低下し、インスリン抵抗性が改善することが報告されています4)。また、2026年のACC/AHA脂質異常症ガイドラインでは、148件のランダム化比較試験のメタ解析にもとづき、運動によってHDLコレステロール(善玉)が2.11 mg/dL上昇、LDLコレステロール(悪玉)が7.22 mg/dL低下、中性脂肪が8.01 mg/dL低下することが示されています5)

メタボリックシンドロームのリスクに対しても、運動の効果は大きいです。週150分の中強度運動に相当する身体活動でメタボリックシンドロームの発症リスクが10%減少し、運動量が増えるほど効果は大きくなります6)。さらに、たった1回の中〜高強度運動でも、その日のうちに血圧低下とインスリン感受性の改善が認められるという即効性も確認されています4)

筋力トレーニングの重要性

有酸素運動だけでなく、筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)も生活習慣病予防において重要な役割を果たします。AHAの2023年更新の声明では、主要筋群を対象に、中〜高強度(最大努力の40〜80%)で、6種目×3セット×10回の動的レジスタンス運動を週2〜3回行うことが推奨されています1,2,7)

筋力トレーニングの効果として、除脂肪体重(筋肉量)が0.8 kg増加し、体脂肪率が1.6%減少するとともに、収縮期血圧が4 mmHg、拡張期血圧が2 mmHg低下することが報告されています1,4,7)。筋肉量の維持は基礎代謝を保ち、加齢にともなう体組成の変化を防ぐうえでも大切です。

具体的な筋力トレーニングの例としては、スクワット、腕立て伏せ、腹筋運動、ダンベルを使った運動などがあります。ジムに通わなくても、自分の体重を使った運動(自重トレーニング)で十分に効果が得られます。

有酸素運動と筋トレの組み合わせが最も効果的

最新の研究では、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることで、どちらか単独よりも大きな効果が得られることが明らかになっています。2023年に発表された大規模観察研究(JAMA Internal Medicine誌)では、有酸素運動と筋力トレーニングの両方を行っている人は、全死因死亡率と心血管疾患死亡率が40〜46%低下したのに対し、どちらか単独では18〜29%の低下にとどまりました8)

2026年のメタボリックシンドロームに関する包括的レビュー(122件の研究、9,639名)でも、有酸素運動と筋力トレーニングの併用により、空腹時血糖が0.73 mmol/L、中性脂肪が0.26 mmol/L、収縮期血圧が4.25 mmHg低下することが示されています9)

つまり、「歩く+筋トレ」の組み合わせが、生活習慣病予防には最も理にかなったアプローチといえます。

「少しでも動く」ことの大きな価値

推奨量に届かなくても、少しでも運動を始めることには大きな意味があります。2026年にLancet誌に発表された大規模メタ解析では、最も運動量が少ない人々が1日わずか5分の中〜高強度運動を追加するだけで、追跡期間中の全死亡の約10%が回避できた可能性があると推計されています。また、座っている時間を1日30分減らすだけでも7%の死亡が回避できた可能性があるとされています10)

3,000万人以上を対象とした用量反応メタ解析では、運動量ゼロから週150分の中強度運動に相当する量までの間でリスク低下が最も大きく、それ以上では追加効果が小さくなる「逓減パターン」が確認されています11)。これは、現在まったく運動していない方が少し動き始めることで、最も大きな健康上のメリットを得られることを意味します。

座りっぱなしの時間が長い方は、30分ごとに立ち上がって軽く歩いたり、ストレッチをしたりするだけでも効果があります2,4)

高齢者の運動で大切なこと

高齢者(65歳以上)も、成人と同じ基本推奨(週150分以上の中強度有酸素運動+週2回以上の筋力トレーニング)が当てはまります。これに加えて、高齢者では転倒予防のためのバランストレーニングが特に重要です12,13)

転倒予防に効果的な運動プログラムについて、システマティックレビューでは以下の結果が報告されています14)

  • バランス・機能的運動: 転倒率を24%減少
  • バランス+筋力の多成分運動: 転倒率を28%減少
  • 太極拳: 転倒率を23%減少
  • 週3回以上のバランストレーニングを含むプログラム: 転倒率を42%減少

転倒予防には合計50時間以上の運動の蓄積が必要とされており、週3回・12か月以上の継続が最も効果的です13,14)。慢性疾患をお持ちの方も、体力レベルに応じて「できる範囲で、できるだけ動く」ことが推奨されています12)

運動を始めるためのポイント

これから運動を始めようという方には、以下のステップをおすすめします。

  1. 低強度から始める: ゆっくりした散歩や軽いストレッチから始めて、体が慣れてきたら徐々に速度や時間を増やしましょう3)
  2. 日常の歩数を増やす: エレベーターの代わりに階段を使う、一駅手前で降りて歩くなど、日常生活のなかで歩く機会を増やすことも有効です15)
  3. 週2回の筋トレを加える: スクワットや腕立て伏せなど、大きな筋群を使う運動を週2回取り入れましょう。無理のない回数から始めて構いません7)
  4. 座りっぱなしを減らす: 30分に1回は立ち上がって体を動かす習慣をつけましょう2,4)
  5. 継続を最優先にする: 完璧を目指す必要はありません。楽しめる運動を見つけて、長く続けることが何より大切です。

持病のある方や、運動中に胸痛・強い息切れ・めまいなどの症状がある方は、運動を始める前に必ず主治医にご相談ください。当院でも運動についてのご相談を承っておりますので、お気軽にお声がけください。

よくあるご質問

Q. 運動はどのくらいの頻度で行えばよいですか?

有酸素運動は週5日程度(合計150分以上)、筋力トレーニングは週2〜3回が目安です。毎日でなくても構いません。週末にまとめて行う「週末戦士」型でも、週を通じて分散する場合と同等の効果があるとされています4)

Q. ウォーキングだけでも効果はありますか?

はい、早歩き(中強度の有酸素運動)でも十分な効果が期待できます。1日30分の早歩きを週5日行えば、週150分の推奨量を達成できます。ただし、有酸素運動に筋力トレーニングを加えることで、さらに大きな健康効果が得られます8)

Q. 高齢でも筋力トレーニングは必要ですか?

むしろ高齢者ほど筋力トレーニングが重要です。加齢にともなう筋力低下(サルコペニア)は転倒や要介護のリスクを高めます。軽い負荷から始めて、体力に合わせて徐々に強度を上げていくことが推奨されています7,12)

Q. 持病があっても運動して大丈夫ですか?

多くの慢性疾患において、適切な運動はむしろ推奨されています。ただし、運動の種類や強度は個々の病状に合わせて調整する必要があります。心疾患、重度の高血圧、糖尿病で血糖コントロールが不安定な場合などは、運動を始める前に主治医にご相談ください3,4)

参考文献

  • 1) Barone Gibbs B, Hivert MF, Jerome GJ, et al. Physical Activity as a Critical Component of First-Line Treatment for Elevated Blood Pressure or Cholesterol. Hypertension. 2021;78(2):e26-e37.
  • 2) Joseph JJ, Deedwania P, Acharya T, et al. Comprehensive Management of Cardiovascular Risk Factors for Adults With Type 2 Diabetes. Circulation. 2022;145(15):e722-e759.
  • 3) Arnett DK, Blumenthal RS, Albert MA, et al. 2019 ACC/AHA Guideline on the Primary Prevention of Cardiovascular Disease. J Am Coll Cardiol. 2019;74(10):e177-e232.
  • 4) Swift DL, Ross LM, Laddu DR, et al. Role of Physical Activity in Obesity Treatment and Cardiometabolic Health. Circulation. 2026.
  • 5) Blumenthal RS, Morris PB, Gaudino M, et al. 2026 ACC/AHA Guideline on the Management of Dyslipidemia. J Am Coll Cardiol. 2026.
  • 6) Zhang D, Liu X, Liu Y, et al. Leisure-Time Physical Activity and Incident Metabolic Syndrome. Metabolism. 2017;75:36-44.
  • 7) Paluch AE, Boyer WR, Franklin BA, et al. Resistance Exercise Training: 2023 Update. Circulation. 2024;149(3):e217-e231.
  • 8) López-Bueno R, Ahmadi M, Stamatakis E, et al. Combinations of Aerobic and Muscle-Strengthening Activity With Mortality. JAMA Intern Med. 2023;183(9):982-990.
  • 9) Poon ET, Li HY, Wong PS, et al. Exercise-Based Interventions for Metabolic Syndrome. Obes Rev. 2026.
  • 10) Ekelund U, Tarp J, Ding D, et al. Deaths Potentially Averted by Small Changes in Physical Activity. Lancet. 2026.
  • 11) Garcia L, Pearce M, Abbas A, et al. Non-Occupational Physical Activity and Risk of CVD, Cancer and Mortality. Br J Sports Med. 2023;57(15):979-989.
  • 12) Piercy KL, Troiano RP, Ballard RM, et al. The Physical Activity Guidelines for Americans. JAMA. 2018;320(19):2020-2028.
  • 13) Eckstrom E, Vincenzo JL, Casey CM, et al. American Geriatrics Society Response to the World Falls Guidelines. J Am Geriatr Soc. 2024;72(5):1361-1365.
  • 14) Sherrington C, Fairhall N, Kwok W, et al. Physical Activity and Falls Prevention for People Aged 65+. Int J Behav Nutr Phys Act. 2020;17(1):144.
  • 15) Pelekanou C, Anastasiou CA, Mavrogianni C, et al. Physical activity in relation to metabolic health and obesity. Diabetes Obes Metab. 2024;26(9):3894-3905.

著者情報

西新井内科クリニック 院長 森田知宏 森田 知宏(もりた・ともひろ)/ 西新井内科クリニック 院長 医師・医学博士
東京大学医学部卒業。一般内科・訪問診療を担当。最新のエビデンス(科学的根拠)にもとづく診療を心がけています。
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本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診療判断に代わるものではありません。気になる症状がある場合は受診をご検討ください。

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