高血圧の原因と治療 — 新ガイドラインの目標血圧

〒123-0845足立区西新井本町5丁目12番2号

03-3840-4146

WEB予約
下層メインビジュアル

高血圧の原因と治療 — 新ガイドラインの目標血圧

高血圧の原因と治療 — 新ガイドラインの目標血圧


「血圧の目標、最近変わったんですか?」

外来でよく聞かれるようになりました。「テレビで血圧の基準が厳しくなったと言っていた」「親の薬が増えるのでは」とご心配の方も多いです。

2025年、高血圧の診療指針(高血圧管理・治療ガイドライン2025)が6年ぶりに改訂されました。このコラムでは、何が変わったのか・なぜ変わったのか、そしておひとりずつでどう考えるべきかを、できるだけやさしくお伝えします。

2025年、目標は「130/80未満」に統一されました

これまでは「75歳未満は130/80未満、75歳以上は140/90未満」と年齢で分かれていましたが、2025年からは年齢にかかわらず、まず130/80未満(ご家庭での測定なら125/75未満)を目標にする、という考え方に整理されました。

ガイドラインの名前も「治療」から「管理・治療」へ変わりました。これは、高血圧になってから治療するのではなく、その手前の段階から血圧を管理していきましょう、というメッセージの表れです。

大事なこと:「高血圧の基準」と「治療の目標」は別物です

ここはよく誤解されるところなので、はっきりお伝えします。

  • 高血圧と診断するラインは、これまでどおり 診察室で140/90以上(ご家庭で135/85以上)です。ここは変わっていません。
  • 変わったのは、お薬や生活改善で「下げていく目標」のほう。これが130/80未満になりました。

つまり「基準が下がって、急に病人が増えた」という話ではありません。すでに治療している方の“ゴール”が少し手前に動いた、と考えていただくのが正確です。

なぜ目標が厳しくなったの?— 研究でわかってきたこと

「専門家がなんとなく決めた」わけではなく、大規模な臨床研究の積み重ねで見直されました。

たとえば、心臓・血管のリスクが高い方を対象にした海外の研究(SPRINT試験)では、血圧をより低めにコントロールしたグループのほうが、心筋梗塞や脳卒中などの発作が起きにくかったことが報告されています。高齢の方を対象にした研究(STEP試験)でも、同じ方向の結果が示されました。

血圧と病気のリスクは「140を超えたら急に危険」というより、130台のあたりから少しずつ高まっていくことがわかっています。だからこそ、無理のない範囲で早めに整えておくことに意味がある、という考え方です。

ただし「下げればいい」というものではありません

一方で、同じ研究では、強く下げたグループでふらつき・立ちくらみ・失神・腎臓への負担などが増えたことも報告されています。

血圧は、下げることの利益と、下げ過ぎることの不利益(めまい・転倒・だるさなど)のバランスで決めるものです。数字だけを追いかけて一律に下げることは、当院では行いません。

お薬も少しずつ進歩しています

高血圧のお薬の基本は長年大きく変わっていませんが、続けやすさは進歩しています。たとえば、2種類の成分を1錠にまとめた配合剤を使うと、飲む錠数を減らしながら目標に近づけることができます。また、これまでのお薬で下がりにくい方向けの新しいタイプのお薬も使えるようになりました。

さらに、「半年に1回の注射」や「カテーテルによる治療」など、新しい方法の研究も世界中で進んでいます(※研究・開発段階のものを含み、当院で実施しているという意味ではありません)。お薬が合わない・効きにくいと感じる方も、選択肢は広がっていますので、ご相談ください。

高齢の方は「年齢」ではなく「お元気さ」で決めます

ここが、今回いちばんお伝えしたい点です。

新しい指針でも、高齢の方の目標は「年齢で一律に緩める」のではなく、お一人おひとりの“お元気さ”(体力・持病・生活の状況)に合わせて個別に決めることが重視されています。

  • お元気で活動的な高齢の方は、しっかり管理することで発作の予防が期待できます。
  • 一方、フレイル(心身が弱ってきた状態)や介護が必要な方では、無理に下げるとかえって転倒や体調不良につながりかねません。こうした場合は、目標をゆるめたり、お薬を減らす判断も大切になります。

お薬が多くなりがちな高齢の方については、こちらのコラムもあわせてご覧ください。
👉 親御さんの薬が多すぎて心配な方へ — 高齢者の多剤併用(ポリファーマシー)を「適切に」見直す方法

当院の考え方 — おひとりずつに合わせた目標を、副作用に配慮しながら

当院では、ガイドラインの数字をそのまま当てはめるのではなく、

  • ご年齢だけでなく、お元気さ・持病・お薬の状況・生活を踏まえ、
  • ふらつきや立ちくらみなどの副作用に注意しながら
  • その方に合った目標値を一緒に決めていきます。

ご家庭での血圧測定の結果も大切な手がかりです。訪問診療にも対応していますので、通院が難しくなった方の血圧管理もご相談いただけます。

高血圧は単独でも危険ですが、糖尿病や脂質異常症を併せ持つとリスクはさらに高まります。複数の生活習慣病をまとめて管理する視点については「生活習慣病の予防と治療」、糖尿病との関連については「糖尿病」のページもあわせてご覧ください。

よくあるご質問

Q. 今まで「140まで大丈夫」と言われていました。間違いだったの?

いいえ。診断のラインは今も140/90です。変わったのは「治療で目指す目標」で、あなたの状態によって適切な目標は異なります。

Q. 高齢の家族の血圧、もっと下げるべき?

一律には言えません。お元気な方としっかり管理した方がよい場合も、フレイルでゆるめた方がよい場合もあります。診察でご一緒に判断します。

Q. 薬は一生やめられないの?

生活改善や体調の変化で減量・調整できることもあります。自己判断での中止は危険ですので、ご相談ください。



著者情報

西新井内科クリニック 院長 森田知宏 森田 知宏(もりた・ともひろ)/ 西新井内科クリニック 院長 医師・医学博士
東京大学医学部卒業。一般内科・訪問診療を担当。最新のエビデンス(科学的根拠)にもとづく診療を心がけています。
▶ 院長の経歴・研究業績を見る

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診療判断に代わるものではありません。気になる症状や検査結果がある場合は受診をご検討ください。

TOP