訪問診療への切り替えを提案するとき

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訪問診療への切り替えを提案するとき――ケアマネジャー・地域包括支援センターの方へ

訪問診療への切り替えを提案するとき

「通院はまだできているが、付き添う家族がもたなくなってきた」「本人が受診を拒むようになり、薬が切れたまま来月を迎えそうだ」「在宅に切り替えたほうがよいと思うが、今の主治医にどう切り出せばよいか分からない」――ケアマネジャー、地域包括支援センター、訪問看護ステーションのみなさまから、こうしたご相談をいただきます。

訪問診療への切り替えは、「もう通えなくなったから」ではなく、「通えなくなる前」に動いたほうが、結果としてご本人の負担が小さくなることが少なくありません。この記事では、(1)切り替えを検討する場面、(2)ご家族への伝え方、(3)現在の主治医との関係の整理、(4)相談の前に揃っていると早い情報を、順に整理します。

当院の受け入れの考え方・対応できる医療処置の一覧は 訪問診療 連携・ご紹介のご案内(医療機関・ケアマネジャー・施設の方へ) に記載しています。本記事は「いつ提案するか」の判断について書いています。

1. 切り替えを検討する場面

次のような場面は、在宅医療の話題を出してよいタイミングです。

受診行動が崩れ始めたとき

  • 受診間隔が処方日数より延び、残薬が積み上がっている
  • 「今日は行かない」が増え、代理受診でしのいでいる
  • 受診の翌日から数日、臥床がちになる(受診そのものが体力を削っている)

残薬は、もっとも早く現れて、もっとも見えやすいサインです。訪問時に薬箱を確認できる立場の方が最初に気づくことが多く、ここで一度共有していただけると動きやすくなります。

介護者側の限界が近づいたとき

  • 付き添いのために家族が就労を調整している
  • 通院の介助(車の乗降・待ち時間の見守り)が身体的に難しくなってきた
  • 主介護者が高齢、または遠方に住んでいる

ご本人の医学的な状態が変わらなくても、介護者側の事情で通院が続かなくなることがあります。これも立派な切り替えの理由です。

入退院を機に

  • 退院前カンファレンスが設定された
  • 退院後に在宅酸素・カテーテル・経管栄養などの管理が必要
  • 短期間に再入院を繰り返している

退院前カンファレンスの段階で在宅医が決まっていると、退院当日からの訪問も調整しやすくなります。退院日が決まってからではなく、退院の方向が見えた時点でご連絡いただくのが、いちばん段取りが取りやすい形です。

意思決定の見通しが必要になったとき

看取りの希望が語られ始めた、あるいはご家族から「最期はどうなるのか」という質問が出たときも、在宅医が入る意味が大きい場面です。療養場所の希望は途中で変わってよいものですが、話し合う相手が決まっていることで、変えやすくなります。

2. ご家族への伝え方

「訪問診療にしましょう」という提案は、ご家族に「もう治療をしない段階に入った」という意味に受け取られることがあります。実際には、訪問診療は治療をやめることではなく、通院という手段を置き換えるものです。次のような順序で伝えると、誤解が減ります。

  1. いま起きている困りごとを具体的に言葉にする(残薬、付き添いの負担、受診後の消耗)
  2. それが通院という手段によって生じていることを示す
  3. 訪問診療は「かかりつけ医が家に来る形」であり、保険診療で、費用の目安も示せることを伝える
  4. 今の通院先をすべてやめる話ではないことを伝える(専門治療は継続できる場合がある)
  5. 断ってもよい、まず話を聞くだけでもよい、と選択の余地を残す

費用が心配で切り出せないご家族も多くいらっしゃいます。月2回の定期訪問で、70歳以上・1割負担の方であれば1か月あたり約7,000円が目安であることを早めに示すと、話が進みやすくなります(負担割合や検査・処置の内容により異なります)。

3. 現在の主治医との関係をどう整理するか

もっとも気を使う部分ですが、次の2つを分けて考えると整理しやすくなります。

  • 在宅での療養全体を担当する医師(定期的に訪問し、処方・急変時の対応・書類を担う)
  • 専門治療のために継続して通う医療機関(がん治療、透析、専門的な処置など)

前者を在宅医に移し、後者は通院を続ける、という組み合わせは一般的です。「今の先生を替える」ではなく「役割を分ける」という説明のほうが、ご本人・ご家族にも、現在の主治医にも受け入れられやすいことが多いように感じています。

診療情報提供書の依頼は、ご家族から現在の主治医へお願いしていただく形が基本です。依頼が難しい場合は、その旨も含めてご相談ください。

4. 相談の前に揃っていると早い情報

次の情報がそろっていると、受け入れの可否をお返しするまでが早くなります。すべて揃っていなくても差し支えありません。

  • 主たる傷病名・現病歴、現在の入院先や退院予定日
  • ADL(日常生活の自立度)・要介護度
  • 実施中の医療処置(在宅酸素・カテーテル・経管栄養など)と使用中の医療機器
  • 内服・処方の内容
  • ご本人・ご家族の療養に対するご意向(看取りのご希望を含む)
  • 担当ケアマネジャー・訪問看護ステーションの有無と連絡先
  • お住まいの地域(訪問可能なエリアかどうかの確認のため)

5. 書類の対応について

主治医意見書、訪問看護指示書、居宅療養管理指導にかかる情報提供、各種診断書・意見書、在宅での看取りに伴う死亡診断書の交付など、在宅療養に必要な書類に対応しています。作成はおおむね1週間以内を目安にお返ししています。認定の更新期限や退院日が迫っているなど、お急ぎの事情がある場合は、ご連絡の際にその旨をお伝えください。

よくあるご質問

Q. まだ通院できている方でも相談してよいですか?

はい。通院が困難になりつつある段階でのご相談を承っています。実際には、通えなくなってからよりも、通いにくくなってきた段階でご連絡いただいたほうが、ご本人の負担が小さく済むことが多いと感じています。訪問診療の対象になるかどうかを含めてご相談ください。

Q. 受け入れの可否だけ先に知りたいのですが。

差し支えありません。お電話または訪問診療ご相談フォームから、状況をお聞かせください。医学的に安全にお受けできるかを確認したうえで、できるだけ早くお返事するよう努めています。

Q. 対応エリアを教えてください。

足立区西新井本町の当院を拠点に、西新井・西新井栄町・興野・関原・本木・梅田・栗原・扇・江北・加賀・皿沼・谷在家・花畑など足立区内へうかがっています。台東区・墨田区・北区の一部にも訪問しています。記載のない地域についても、お問い合わせください。

Q. 退院当日からの訪問は可能ですか?

日程や患者さんの状態により対応します。退院前カンファレンスの段階からご相談いただけると、日程を調整しやすくなります。

Q. 入院が必要になったときはどうなりますか?

後方支援として提携病院と連携しています(医療法人財団 逸生会 大橋病院、永寿総合病院)。在宅での療養と、必要なときの入院とを、地域の多職種のみなさまとともに支えます。

ご連絡先

お電話:03-3840-4146(受付時間:平日 9:00〜12:00/14:00〜17:00、土 9:00〜12:00)
訪問診療ご相談フォーム:こちらから(24時間受付)。ご相談者の立場(病院・連携室/ケアマネジャー/施設 など)を選んでお送りいただけます。

▶ 訪問診療 連携・ご紹介のご案内(受け入れの考え方・対応できる医療処置)
▶ 足立区の訪問診療について(対応エリア・診療内容・費用)

参考資料


著者情報

西新井内科クリニック 院長 森田知宏 森田 知宏(もりた・ともひろ)/ 西新井内科クリニック 院長 医師・医学博士
東京大学医学部卒業。一般内科・訪問診療を担当。最新のエビデンス(科学的根拠)にもとづく診療を心がけています。
▶ 院長の経歴・研究業績を見る

本記事は、介護・医療関係のみなさまに向けた一般的なご案内です。実際の受け入れ可否や診療方針は、患者さんの状態を確認のうえ個別に判断します。

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