コレステロール外来(脂質異常症)
コレステロール外来(脂質異常症)
「健診でLDLコレステロールが高いと言われた」
「症状がないのに薬を飲む必要があるのかわからない」
「LDL 150と言われたが、どのくらい悪いのかわからない」
「中性脂肪だけが毎年高い」
「食事を気をつけているのにコレステロールが下がらない」
そのような段階からご相談いただけます。
脂質異常症の治療は、LDLコレステロールの数字だけでは決まりません。
年齢、血圧、糖尿病、喫煙、腎臓病、ご家族の病歴などから、将来の心筋梗塞や脳梗塞のリスクを考え、その方に合ったLDLコレステロールの目標値を決めることが重要です。[1]
同じLDL 150 mg/dLでも、生活習慣の改善から始める方もいれば、早めの薬物治療を検討した方がよい方もいます。
当院では、健診結果の再評価から、食事・運動の相談、必要に応じた薬物治療、家族性高コレステロール血症などの確認まで、内科のかかりつけ医として継続して診療します。
健診結果の用紙をそのままお持ちください。
コレステロール治療の目的は、検査値を正常範囲にすること自体ではなく、将来の心筋梗塞や脳梗塞などの動脈硬化性疾患を防ぐことです。
そのため、日本動脈硬化学会のガイドラインでは、LDLコレステロールの目標値を全員一律にはしていません。[1]
おおまかな考え方は以下の通りです。
| 区分 | LDLコレステロールの目標 |
|---|---|
| 低リスク(これから予防する方) | 160 mg/dL未満 |
| 中リスク | 140 mg/dL未満 |
| 高リスク(糖尿病、慢性腎臓病など) | 120 mg/dL未満(糖尿病で合併症や喫煙がある場合は100 mg/dL未満) |
| 心筋梗塞・脳梗塞(アテローム血栓性)を起こしたことがある方 | 100 mg/dL未満(急性冠症候群や家族性高コレステロール血症などでは70 mg/dL未満) |
※実際の目標値は糖尿病、慢性腎臓病、末梢動脈疾患、喫煙、家族性高コレステロール血症などによって変わります。[1]
つまり、
「LDL 150だから薬を飲む」
ではなく、
「この方の将来のリスクなら、LDLをどこまで下げることに意味があるか」
を考えることが大切です。
▶ リスクと目標値の考え方は、コラム「脂質異常症――「症状がないのに薬?」LDL・中性脂肪を“リスクに合った目標”で」で詳しく解説しています。ご自身のおおよその区分は、健診異常・要再検査のページにある「かんたんリスク&目標値チェック」でも確認できます。
2025年に更新された欧州(ESC/EAS)のガイドラインでは、心血管病のない方について、生活習慣の改善を行ったうえで、低リスクの方でもLDLコレステロールが116〜190 mg/dL未満の範囲であれば、薬物療法を「考慮すべき」としています。リスクが高い区分では、さらに低い値から薬物療法が推奨されます。[5]
日本の低リスクの目標値(160 mg/dL未満)とは差がありますが、これは「116以上なら全員が薬を飲む」という意味ではありません。欧州のガイドラインでも、年齢・血圧・喫煙・糖尿病・腎機能・家族歴などを含めた心血管リスク全体をふまえて判断することが前提です。
当院では日本のガイドラインを基本としながら、こうした国際的な考え方も参考に、お一人ずつ利益と負担を確認しながらご提案します。
▶ 考え方の詳細は、コラム「LDLは160未満なら薬はいらない? — スタチンを「少し早め、必要な強さで」始めるという考え方」で解説しています。
動脈硬化のリスクを考えるときには、現在のLDL値だけでなく、高いLDLにどのくらい長い期間さらされるかも重要です。
近年の脂質管理では、こうした「生涯にわたるLDLへの累積曝露」がより重視されるようになっています。[2]
例えば40歳でLDL 170 mg/dLの方が、その後20〜30年間高値のままであれば、血管は長期間にわたって高いLDLにさらされることになります。
そのため、
といった場合には、「若いからまだ大丈夫」と一律に判断せず、将来のリスクを考える必要があります。
特にLDLが著しく高い場合には、遺伝的な体質が関係する家族性高コレステロール血症(FH)がないか確認することが重要です。
これまで、心血管病のない70歳以上の方について、コレステロールの薬を始めるべきかどうかを直接調べた大規模な試験は限られていました。
2026年8月に発表されたSTAREE試験では、心血管病・糖尿病・認知症のない70歳以上の9,971人を、スタチン(アトルバスタチン40 mg)とプラセボに無作為に分けて、中央値5.9年観察しています。その結果、心血管死・心筋梗塞・脳卒中・冠動脈の血行再建を合わせた主要な心血管イベントは、8.3%から6.0%へ減少しました(ハザード比0.70)。[7]
一方で、死亡・認知症・持続する身体障害を含めた「障害なく生存できる期間」には、統計学的に有意な差はみられませんでした。[7]
なお、この試験で用いられたアトルバスタチン40 mgは、日本では家族性高コレステロール血症の重症例に用いられる用量で、通常の高コレステロール血症では1日20 mgまでとされています。海外の試験の用量をそのまま日本の診療に当てはめられるわけではありません。
この結果は、お元気に生活されている70歳以上の方について、「年齢が高いから」という理由だけで治療を見送る必要はなさそうだと考える材料になります。ただし、フレイル(心身の虚弱)が進んでいる方、余命が限られている方、多くのお薬を服用されている方に、同じ結論をそのまま当てはめられるわけではありません。
当院では年齢だけで判断せず、生活の状況や他のお薬も含めて一緒に検討します。
家族性高コレステロール血症(Familial Hypercholesterolemia:FH)は、遺伝的にLDLコレステロールが高くなる病気です。
FHでは若い頃からLDLが高い状態が続くため、通常より早い時期から動脈硬化が進む可能性があります。
日本動脈硬化学会の成人FH診療ガイドライン2025では、成人(15歳以上)について、
という3項目のうち2項目以上を満たす場合にFHと診断します。[3]
したがって、LDL 180 mg/dL以上だからそれだけでFHと確定するわけではありません。
一方で、
といった場合には、FHを考えるきっかけになります。
「脂っこいものを食べているから」と自己判断せず、一度評価することをおすすめします。
必要に応じて専門医療機関と連携します。
通常の健康診断では、LDL・HDL・中性脂肪が中心です。
しかし近年、これらとは別にLp(a):リポ蛋白(a)が動脈硬化リスクの一つとして注目されています。
Lp(a)はその値の多くが遺伝的に決まり、生活習慣による影響が比較的小さい脂質です。高いLp(a)は冠動脈疾患などのリスク上昇と関連します。[4]
2025年の欧州ESC/EASガイドライン更新では、Lp(a) 50 mg/dL超を心血管リスクを高める因子として考慮することが示されました。[5]
さらに2026年のACC/AHA脂質異常症ガイドラインでは、成人で少なくとも一生に一度Lp(a)を測定することが推奨されています。[2]
日本ではすべての方に一律に測定するという位置づけではありませんが、
といった場合には、必要に応じてLp(a)の評価を検討します。
なお、現時点ではLp(a)だけを下げることで心筋梗塞などが減ることを確立した治療はまだ限られており、Lp(a)が高い場合には、まずLDL、血圧、糖尿病、喫煙など治療可能な他のリスク因子をしっかり管理することが重要です。[4][5]
中性脂肪(トリグリセライド:TG)は、LDLコレステロールとは少し性質が異なります。
日本動脈硬化学会では、
を高トリグリセライド血症の基準としています。[1]
中性脂肪は、
などの影響を受けやすいのが特徴です。
そのため、中性脂肪が高い場合にはLDLとは異なる視点から生活習慣や背景疾患を確認します。
中性脂肪が著しく高い場合には、動脈硬化だけでなく急性膵炎のリスクも問題になります。
健診で非常に高い値を指摘された場合や、過去にも高値を繰り返している場合は早めにご相談ください。
LDLコレステロールが高いからといって、必ずしも食生活だけが原因ではありません。
例えば、
などによって脂質異常が起こることがあります。
初診ではこれまでの検査結果や薬の内容を確認し、必要に応じて血糖、肝機能、腎機能、甲状腺機能なども調べます。
LDLコレステロールが高いと、
「卵を食べない方がいいですか?」
「コレステロールを含む食品を全部避けるべきですか?」
と聞かれることがあります。
食事に含まれるコレステロールも無関係ではありませんが、LDLコレステロールを考えるうえでは、飽和脂肪酸を取りすぎないことも重要です。
飽和脂肪酸は、
などに多く含まれます。
一方、
などを取り入れることが勧められます。[1]
ただし、LDLコレステロールには遺伝的な影響も大きく、食生活をかなり改善しても十分下がらない方もいます。
その場合に「努力が足りない」と考える必要はありません。
検査値と心血管リスクを見ながら、生活習慣だけでよいのか、薬を使った方がよいのかを考えます。
LDLコレステロールを下げる薬の中心はスタチンです。
多数のランダム化比較試験をまとめたメタ解析では、LDLコレステロールを約39 mg/dL(1 mmol/L)低下させるごとに、主要な血管イベントが約20%低下することが示されています。[6]
一方、必要なLDL低下幅や副作用などによっては、スタチンだけで治療するとは限りません。
を、リスクや目標値に応じて単独または組み合わせて使用することがあります。
2025 ESC/EASや2026 ACC/AHAでも、リスクの高い患者では目標達成のために非スタチン薬を組み合わせる考え方がより明確になっています。[2][5]
心筋梗塞・狭心症を起こしたことがある方や、家族性高コレステロール血症などでより強力な治療が必要な方は、専門医療機関と連携することがあります。
スタチンを服用すると、一部の方に筋肉痛、筋力低下、肝機能異常などがみられることがあります。
一方で、
「スタチンを飲んでいる時期に筋肉痛が起きた」
というだけでは、必ずしも薬が原因とは限りません。
症状がある場合には、
などを確認します。
スタチンには、新たに糖尿病と診断される方がわずかに増える可能性が知られています。
2024年に報告されたランダム化比較試験の統合解析では、糖尿病のない方の新規の糖尿病が、低〜中強度のスタチンで約10%、高強度のスタチンで約36%(いずれも相対的な増加)多くみられました。一方でHbA1cの平均的な上昇はそれぞれ約0.06%、約0.08%とわずかで、新たに診断された方の約62%は、治療を始める前から血糖の指標が高めの範囲にあった方でした。[8]
血糖が正常な方が急に糖尿病になるというより、もともとなりやすい方の診断時期が少し早まる、という理解に近いと考えられます。心筋梗塞・脳梗塞を防ぐ利益の方が上回る方も多いため、両方を比べたうえで判断します。
当院では、スタチンを始める前にHbA1cを含めた血糖の指標を確認します。糖代謝が気になる方では、低〜中用量から開始して必要なLDLの低下幅をみながら調整する方法や、薬剤の種類を検討する方法があります。スタチンの種類によって糖代謝への影響が異なる可能性を示した研究もありますが、観察研究を含むため確定的な結論ではありません。[9][10]
なお、すでに動脈硬化性疾患がある方や心血管リスクが高い方では、糖尿病の発症を心配してLDLの低下が不十分になる方が問題となることがあります。
副作用が心配な場合も、自己判断で中止せずご相談ください。
以下について確認します。
健診結果や過去の血液検査、お薬手帳があればお持ちください。
状態に応じて以下を調べます。
| 検査・評価 | 主に確認すること |
|---|---|
| LDL・HDL・中性脂肪 | 脂質異常症の種類 |
| non-HDLコレステロール | LDL以外も含めた動脈硬化性リポ蛋白 |
| 血糖・HbA1c | 糖尿病 |
| 腎機能 | 慢性腎臓病、続発性脂質異常症 |
| 肝機能 | 脂肪肝、薬物治療前後の確認 |
| 甲状腺機能 | 甲状腺機能低下症 |
| 血圧 | 心血管リスク |
| 家族歴 | FH・早発性冠動脈疾患 |
| Lp(a) | 必要な場合の追加リスク評価 |
必要に応じて心電図などを行い、さらに詳しい動脈硬化評価が必要な場合には専門医療機関へご紹介します。
検査結果と、
などを総合して、どこまでLDLを下げることが望ましいかを考えます。
低リスクで軽度の異常であれば、食事・運動などの生活習慣改善から始めることがあります。
一方、高リスクの方やLDLが著しく高い方では、生活習慣だけで長期間様子を見ることが適切でない場合があります。
「薬を飲むか、飲まないか」ではなく、薬を使うことで将来どの程度の利益が期待できるかを考えて治療方針を相談します。
脂質異常症、高血圧、糖尿病、喫煙、腎臓病などは、それぞれ独立して心血管リスクに影響します。
複数のリスクが重なるほど、同じLDL値でも治療の重要性は高くなります。
当院ではコレステロールだけでなく、血圧、血糖、腎機能、体重などもまとめて評価します。
脂質異常症の診療は保険診療です。月1回の通院で、診察と療養計画の管理にかかる費用は3割負担で約1,400円(再診料76点+生活習慣病管理料(Ⅱ)333点+処方箋料60点。令和8年度診療報酬改定(2026年6月施行)の点数)です。血液検査を行う月は、検査の内容に応じて1,000〜3,000円程度が加わります。お薬代は薬局で別途かかります。初診時は初診料と検査費用がかかります。
※2026年8月時点の点数です。1割・2割負担の方は上記より少なくなります。生活習慣病管理料は、療養計画書にもとづく管理を行う月に算定します。
いいえ。
LDLの数字だけで薬を始めるわけではありません。
年齢、血圧、糖尿病、喫煙、腎臓病、家族歴などによって将来の心筋梗塞・脳梗塞リスクが異なるため、そのリスクに応じて目標値と治療方法を考えます。
LDL 180 mg/dL以上の場合には、食事だけではなく、家族性高コレステロール血症(FH)がないか確認することが重要です。[3]
特に若い頃から高い場合や、ご家族に高コレステロール血症・早発性冠動脈疾患がある場合は、一度医療機関で評価することをおすすめします。
一概には言えません。
動脈硬化ではLDLの高さだけでなく、高い状態がどのくらい長く続くかも重要です。
軽度の異常で他のリスクがなければ生活習慣改善から始める場合もありますが、LDLがかなり高い場合やFHが疑われる場合には、若年でも早期からの管理が重要です。[2][3]
脂質異常症は、通常は症状を起こしません。
治療の目的は現在の症状を改善することではなく、将来の心筋梗塞や脳梗塞を予防することです。
治療が必要かどうかは、ご本人の心血管リスクによって判断します。
卵だけを完全に禁止すればLDLが改善する、という単純なものではありません。
食事全体の中で、肉の脂身やバターなどに多い飽和脂肪酸、食物繊維の摂取、総エネルギー量などを確認することが重要です。
LDLには遺伝的な影響があります。
食生活を改善しても十分に低下しない方は珍しくありません。特にLDLが非常に高い場合にはFHなども考えます。
食事で下がらないことだけを理由に「努力不足」と考える必要はありません。目標値とリスクを確認して次の治療を考えます。
中性脂肪の高値も評価が必要です。
飲酒、肥満、糖尿病、食事などの影響を受けることが多く、生活習慣の改善で大きく変わる場合があります。
著しく高い場合には急性膵炎のリスクもあるため、早めの受診が必要です。
スタチンには筋肉症状や肝機能異常などの副作用がありますが、すべての方に起こるわけではありません。
一方で、心血管リスクの高い方では、LDLを下げることによる心筋梗塞・脳梗塞予防の利益が確立しています。[6]
副作用が疑われる場合には、薬の種類や量の変更、他の薬との組み合わせなどを検討できます。
必ずしもそうではありません。
症状が本当にスタチンによるものかを確認し、必要に応じて薬の種類や量を変更します。
十分量のスタチンを使用できない場合には、別の種類の脂質低下薬を組み合わせる方法もあります。
患者さんによって異なります。
生活習慣や体重の改善で薬を減らせることもありますが、遺伝的にLDLが高い方や心血管リスクが高い方では、長期的に治療を続ける利益が大きいことがあります。
自己判断で中止するとLDLが再び上昇することが多いため、検査結果を確認しながら調整します。
海外では成人で一度は測定することを勧めるガイドラインが登場しています。[2]
一方、日本では現時点ですべての方に一律に測定するという扱いではありません。
家族歴や既往歴、LDL値などを確認し、追加情報が診療に役立つと考えられる場合に測定を検討します。
2026年に発表されたSTAREE試験では、心血管病・糖尿病・認知症のない70歳以上の方について、スタチンを使用した群で主要な心血管イベントが8.3%から6.0%へ減少しました。[7]
一方で、認知症や身体障害を含めた「障害なく生存できる期間」には有意な差はみられませんでした。
年齢だけで判断するのではなく、お体の状況や他のお薬も含めて相談しながら決めます。
新たに糖尿病と診断される方がわずかに増える可能性は、臨床試験でも確認されています。
ただしHbA1cの平均的な上昇はごくわずかで、新たに診断された方の多くは、もともと血糖の指標が高めだった方です。[8]
心筋梗塞・脳梗塞を防ぐ利益が上回る場合も多いため、開始前に血糖の指標を確認したうえで、利益と不利益を比べて判断します。
健診でLDLコレステロールや中性脂肪を指摘された方は、健診結果をそのままお持ちください。
過去の血液検査結果やお薬手帳があれば、あわせてお持ちください。
「薬を飲むほどなのかわからない」という段階でも受診できます。
※本ページは一般的な医学情報の提供を目的としたものです。実際の診断・治療方針は、診察および検査結果にもとづいて個別に判断します。
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森田 知宏(もりた・ともひろ)/ 西新井内科クリニック 院長 医師・医学博士 東京大学医学部卒業。一般内科・訪問診療を担当。科学的根拠にもとづき、患者さんごとの背景を考慮した診療を行っています。 ▶ 院長の経歴・研究業績を見る |
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