男性更年期障害(LOH)とは — 症状・検査・テストステロン補充療法
男性更年期障害(LOH)とは — 症状・検査・テストステロン補充療法
「このごろ疲れがとれない」「気力がわかない」「性欲が落ちた気がする」――40代以降の男性から、こうしたご相談をいただくことが増えています。年齢のせいとあきらめてしまいがちですが、その背景に男性ホルモン(テストステロン)の低下がかくれていることがあります。
この記事では、(1)男性更年期障害(LOH)とはどんな状態か、(2)どんな症状があるときに検査を考えるとよいか、(3)どのように診断し、どう治療するか、(4)当院でどこまで対応できるか、を順にご説明します。
男性更年期障害は、医学的には加齢男性性腺機能低下症(LOH:Late-Onset Hypogonadism、ロー)と呼ばれます。中高年以降の男性で、血液中のテストステロン(男性ホルモン)が低いことに加えて、性欲の低下・朝の勃起(ぼっき)の減少・勃起障害といった性的な症状をともなう状態を指します。
大切な点として、テストステロンが低いことと症状が「同じ人に同時にそろう」ことは、実はそれほど多くありません。多くの場合、肥満(ひまん)や糖尿病などの慢性的な病気が背景にあり、加齢そのものよりも、こうした併存疾患(いっしょに持っている病)が主な原因と考えられています。
LOHの症状は、これといった決め手のない(非特異的な)ものが多く、次のように幅広くあらわれます。
ひとつでも思い当たる方は、まず生活習慣をふり返りつつ、一度ご相談いただくとよいでしょう。ただし、これらの症状は睡眠不足・ストレス・うつ病・甲状腺(こうじょうせん)の病気など、ほかの原因でも起こります。症状だけで男性更年期障害と決めることはできません。
ヨーロッパの大規模な研究(EMAS)では、LOHをきびしく定義しています。朝のテストステロンが低い(総テストステロン11 nmol/L〈約320 ng/dL〉未満、かつ遊離テストステロン220 pmol/L未満)ことに加え、性的な症状が3つ以上そろう場合にLOHと診断します。
このきびしい基準を満たすのは、40〜80歳の男性のうち2〜6%程度にとどまります。「年齢とともにテストステロンが下がる」こと自体はよくあっても、症状までそろって治療が必要になる方は、思われているほど多くありません。ホルモン値だけを見て過剰に診断しないよう、慎重に見きわめることが大切です。
診断は、段階をふんで進めます。
※目安として日本の場合、総テストステロン250 ng/dL(約10.4 nmol/L)未満もしくは遊離テストステロン7.5 pg/mL未満が、治療を検討する一つの基準として用いられます(測定法や施設により基準は多少異なります)。
治療の第一歩は、生活習慣の改善と、背景にある病気の治療です。とくに肥満はLOHの主要な原因であり、減量によってテストステロンが改善することが知られています。まずは体重・血糖・睡眠・運動といった土台を整えることから始めます。
生活習慣の見直しをふまえたうえで、はっきりと低いテストステロンが確認され、それに合う症状がある方には、テストステロン補充療法(TRT:Testosterone Replacement Therapy)を検討します。目標は、テストステロンを正常範囲の中ほどに保つことです。
期待できる効果として、性欲や性機能、貧血、気分・抑うつ症状、活力、歩行などの改善が報告されています。
いっぽうで、TRTには次のような注意すべき点があります。
こうしたリスクを避けるため、TRTは誰にでも行う治療ではありません。次のような方は、原則としてTRTの対象になりません(禁忌)。
治療後のモニタリングとして、開始後3〜6か月、その後は年1回、症状の改善・副作用・テストステロン値・ヘマトクリット(赤血球の割合)・PSA(前立腺の検査値)を確認します。
くり返しになりますが、LOHの主な原因は加齢そのものではなく、加齢にともなう肥満-2型糖尿病・メタボリックシンドロームなどの併存疾患です。そのため、TRTを始める前に、まずこれらへの対処を優先します。診断基準や治療の線引きについては専門家の間でも議論が続いており、過剰な診断・治療を避ける慎重な姿勢が求められます。
つまり、まず採血で見当をつけ、生活習慣と併存疾患を整える。テストステロン補充はそのうえで、適応のある方に慎重に。これが基本の流れです。
当院では、問診・早朝のテストステロン測定・併存疾患(肥満・糖尿病など)の評価から、適応を満たす方へのテストステロン補充療法(TRT)、治療後の定期的なモニタリングまで対応しています。腕からの採血一本で見当をつけられますので、「年齢のせいかな」と迷っている段階でも、まず一度ご相談ください。
※検査・治療の費用や保険の取り扱いは、内容により異なります。詳しくは診察時にご案内します。
内科・泌尿器科などで対応しています。当院(内科)でも、テストステロンの検査から治療・モニタリングまで行っています。気になる症状があれば、まずご相談ください。
朝の空腹時に腕から採血し、テストステロンなどを測定します。テストステロンは朝に高く日中に下がるため、午前中の受診をおすすめします。値が低い場合は、日を変えてもう一度測り、くり返し低いことを確認します。
テストステロンが正常範囲の場合、テストステロン補充療法の対象にはなりません。症状の原因が睡眠・ストレス・うつ・甲状腺など別のところにあることも多いため、その場合はそちらの評価・治療を優先します。
もっとも多いのは赤血球が増えすぎる多血症で、定期的な採血で確認し、必要に応じて調整します。妊娠を希望される方には行いません。前立腺がん・乳がんのある方なども対象外です。開始前の評価と、治療中の定期チェックが大切です。
多くの場合、まず減量や生活習慣の改善、併存疾患の治療から始めます。それだけでテストステロンや症状が改善する方も少なくありません。あわてて補充療法を始めず、土台を整えることが第一歩です。
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森田 知宏(もりた・ともひろ)/ 西新井内科クリニック 院長 医師・医学博士 東京大学医学部卒業。一般内科・訪問診療を担当。最新のエビデンス(科学的根拠)にもとづく診療を心がけています。 ▶ 院長の経歴・研究業績を見る |
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診療判断に代わるものではありません。気になる症状や検査結果がある場合は受診をご検討ください。
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