サウナに入る人は長生きする?|心臓・血圧・認知症との意外な関係
サウナに入る人は長生きする?|心臓・血圧・認知症との意外な関係
サウナは健康にいいのでしょうか。
「汗をかけばデトックスになる」「血流が良くなる」「自律神経が整う」「サウナに入る人は長生きする」など、さまざまな説があります。
この中には医学的にかなり怪しいものもあります。たとえば、汗から老廃物を大量に排出するという意味での「デトックス」は、サウナの主要な健康効果とは考えられていません。
一方で、サウナを頻繁に利用する人ほど、心血管死亡や突然死が少ないという非常に興味深い疫学研究がフィンランドから報告されています。
さらに、血圧や動脈硬化に対する短期的な生理作用については、人を対象とした実験研究もあります。
ただし、ここにも重要な注意点があります。
「サウナに入れば寿命が延びる」と証明されたわけではありません。
この記事では、サウナの健康効果について、何が分かっていて、何がまだ分かっていないのかを整理します。
この分野で最も有名なのが、フィンランドのKuopio Ischaemic Heart Disease Risk Factor Studyです。
2015年に *JAMA Internal Medicine* に発表された研究では、42~60歳の男性2,315人について、サウナに入る頻度を調べ、その後中央値20.7年間追跡しました。
参加者を、
に分けて比較しています。
その結果、週1回の人と比べて、週4~7回サウナに入る人では、突然心臓死のハザード比が0.37でした。
つまり、週4~7回群では突然心臓死が約63%少ないという非常に大きな差です。
冠動脈疾患による死亡、心血管死亡、全死亡についても、頻度が高いほど少ないという関連がみられました。
また、1回のサウナ時間が長い人ほど突然心臓死が少ないという関連もありました。
数字だけを見ると、「毎日サウナに行けば長生きする」と思いたくなる結果です。
しかし、この研究はランダム化比較試験ではなく、観察研究です。
観察研究で最も注意しなければならないのが、交絡(confounding)です。
サウナを週4~7回利用する人と、週1回しか利用しない人では、サウナ以外の生活習慣も違うかもしれません。
たとえば、
などです。
研究では、年齢、血圧、喫煙、糖尿病、コレステロールなど多数の因子を統計的に調整しています。
それでも、測定していない要因を完全に除くことはできません。
さらにフィンランドではサウナが生活文化の一部です。
「週4回サウナに行く」という行動が、日本で週4回サウナ施設に通うことと同じ意味を持つとは限りません。
その後、男性だけではなく女性も含む研究も報告されています。
2018年には、53~74歳の男女1,688人を中央値15年間追跡した研究で、サウナ頻度が高いほど心血管死亡が少ないという関連がみられました。
週1回の人と比較して、
でした(年齢と性別を調整した解析の値です)。
つまり、男女を含む別の集団でも、頻繁なサウナ利用と心血管死亡の低下が関連していました。
ただし、こちらも観察研究です。
同じフィンランドの生活背景から得られたデータが中心である点にも注意が必要です。
さらに興味深いのが認知症です。
同じフィンランドの男性2,315人を約20年間追跡した研究では、週1回サウナに入る人と比べて、週4~7回入る人では、
と、発症が少ないという関連がみられました。
その後、男女13,994人を最長39年間追跡した別のフィンランド研究でも、サウナ頻度が高い人では認知症が少ないという関連が報告されています。
かなり面白い結果です。
ただし、サウナで認知症を予防できると証明されたわけではありません。
運動、社会参加、循環器リスク、生活習慣など、認知症とサウナ利用の両方に関係する要因が多数存在します。
現時点では「仮説として非常に興味深い」という段階です。
暑い環境に入ると、体温を逃がすために皮膚の血管が拡張します。
その結果、
という変化が起こります。
安静にしていても、循環器系にはある程度の負荷がかかります。
一方、末梢血管が拡張するため、サウナ後には血圧が下がることがあります。
2018年には、少なくとも1つの心血管リスク因子を持つ102人を対象として、73℃、湿度10~20%のサウナに30分入る実験が行われました。
平均血圧は、
へ低下しました。
さらに、動脈硬化の指標であるcarotid-femoral pulse wave velocity(PWV)は、9.8 → 8.6 m/sへ低下しました。
収縮期血圧の低下は、サウナ終了30分後にも残っていました。
つまり、少なくとも急性期には、
サウナ → 血管拡張 → 血圧低下・動脈スティフネス低下
という現象は実際に起きます。
ただし、「一時的に血圧が下がった」ことと、「長期的に心筋梗塞が減る」ことは別です。
2021年の系統的レビュー・メタ解析では、サウナに限らず、温浴などを含むheat therapyを10~36回行った15研究がまとめられました。
対照群と比較して、
という結果でした。
熱刺激を繰り返すことで、
が改善する可能性があります。
機序としては、繰り返す血管拡張によるshear stress、一酸化窒素(NO)産生、heat shock protein、炎症・酸化ストレス、自律神経系への影響などが考えられています。
ただし、このメタ解析にはサウナ以外の温熱療法も含まれており、研究規模も大きくありません。
2022年には、心血管リスクを少なくとも1つ持つ、運動習慣の少ない成人47人を対象としたRCTが行われました。
参加者は、
に分けられ、8週間介入しました。
サウナ群では、通常の運動後に15分間のフィンランド式サウナを週3回追加しました。
運動のみの群と比較すると、運動+サウナ群では、
という差がみられました。
これは、「サウナは単なるhealthy-user biasなのでは?」という疑問に対して、介入研究でも一定の効果がある可能性を示す結果です。
ただし参加者は47人、期間は8週間です。
死亡や心筋梗塞を評価した研究ではありません。
ここが科学的には重要です。
2023年には、安定した冠動脈疾患のある成人41人を対象として、
を比較したRCTが報告されました。
結果は意外でした。
サウナ群では熱への適応は起こりましたが、
に有意な改善はありませんでした。
つまり、介入研究の結果は必ずしも一貫していません。
この結果を考えると、「サウナの心血管効果はRCTでも完全に証明された」とは言えません。
対象となる人、サウナの温度、時間、頻度、運動との組み合わせなどで効果が変わる可能性があります。
サウナでは心拍数が上昇するため、「サウナは運動と同じ」と言われることがあります。
これは少し言い過ぎです。
サウナでは心血管系への刺激は起こりますが、
など、運動による多くの効果は得られません。
したがって、サウナは運動の代替ではありません。
一方、熱刺激には運動とは異なる循環器系への作用があるため、「運動に追加するもの」として研究する価値はあります。
サウナの健康効果を説明するとき、「汗から毒素が排出される」という説明をよく見かけます。
しかし、人間の体内の老廃物や薬物の排泄を主に担当しているのは、
です。
汗の主成分は水と電解質です。
微量の化学物質が汗に含まれることはありますが、サウナの心血管・死亡リスクとの関連を「デトックス」で説明する根拠はありません。
むしろサウナで実際に起こる重要な変化は、熱刺激、血管拡張、循環動態、自律神経、発汗による体温調節です。
日本のサウナでは、
サウナ → 水風呂 → 外気浴
という流れがよく行われます。
しかし、フィンランドの長期疫学研究が示したのは主にサウナ浴の習慣です。
日本式の「高温サウナの直後に冷水へ入る」ルーティン全体について、心筋梗塞や死亡を減らすことを示した大規模研究はありません。
冷水に入ると末梢血管が急激に収縮し、血圧や心臓への負荷が急変します。
したがって、サウナの疫学研究を根拠に「水風呂も心臓に良い」とまでは言えません。
特に心血管疾患がある人や血圧変動の大きい人では、極端な温冷刺激には注意が必要です。
サウナと長寿の関連を紹介すると、「サウナは心臓に安全なのか?」という疑問も出てきます。
結論から言えば、サウナ中の死亡は実際に起きています。
フィンランドで1990~2002年のサウナ内死亡を、警察記録、法医解剖、死亡診断書、毒物検査などから調べた研究では、サウナ中またはその周辺での死亡は年間10万人あたり2人未満でした。
死亡原因を見ると、
という特徴がありました。
つまり、サウナは一般的には安全な行為ですが、「健康に良いから、体への負荷もほとんどない」わけではありません。
特に、もともと虚血性心疾患や不整脈などのリスクがある人では、高温環境による心拍数増加、末梢血管拡張、脱水などが重なることで、急性イベントのきっかけになる可能性があります。
ここは少し紛らわしいところです。
先ほど紹介したフィンランドの長期コホートでは、サウナを頻繁に利用する人ほど、追跡期間中の突然心臓死が少ないという結果でした。
一方、法医学的な統計では、サウナ中に心臓突然死する人も一定数います。
これは矛盾しているように見えますが、見ているものが違います。
前者は、「普段からサウナをよく使う人が、長期的にみて突然死しにくいか」を見た研究です。
後者は、「実際にサウナ中に死亡した人に、どのような原因があったか」を見た研究です。
つまり、
長期的には、頻繁なサウナ利用者の心血管リスクが低い可能性がある。
しかし、1回1回のサウナは循環器に一定の急性負荷をかける。
という両方が成り立ちます。
サウナ関連死亡をみると、繰り返し出てくるのがアルコールです。
フィンランドの法医学研究では、サウナ関連死亡の約半数で飲酒が確認されています。
また、古い研究でも、
が重なることが事故の重要な背景として指摘されています。
飲酒後は体温調節も乱れやすく、サウナによる末梢血管拡張や脱水も加わります。
そのため、飲酒後のサウナは避けるべきです。
「少し酔っているだけ」「いつも入っているから大丈夫」と考えない方が安全です。
日本では、フィンランドのようにサウナ利用者全体を分母にした全国的な死亡率データは十分ではありません。
一方、消費者庁の事故情報データバンクには、サウナ利用中の事故が報告されています。
2024年4月末までに登録されたサウナ関連事故は78件、82人で、
などが含まれていました。
ただし、このデータベースは全国の全事故を悉皆的に収集したものではないため、「日本では何人に1人事故が起きる」といった発生率を計算することはできません。
また、日本では浴槽入浴中の心停止・溺水の統計はかなり多く報告されていますが、これをそのままサウナの危険性に置き換えることはできません。
サウナと浴槽入浴は、温度、浸水、循環動態、事故の仕組みが異なるからです。
健康な成人が通常の範囲でサウナを利用することは、一般に安全と考えられています。
一方で、
場合には避けた方がよいでしょう。
特に飲酒後のサウナは勧められません。
アルコールとサウナはいずれも血圧や循環動態に影響し、脱水、低血圧、失神、転倒などの危険を高めます。
古いフィンランドの調査でも、サウナ関連死亡ではアルコールが重要な要因として繰り返し指摘されています。
また、古典的なレビューでは、不安定狭心症、最近の心筋梗塞、重症大動脈弁狭窄症などはサウナを避けるべき状態として挙げられています。
心疾患がある場合には、「心臓にいいらしいから」と自己判断で高温・長時間のサウナを始めるのではなく、主治医に相談する方が安全です。
ここも、まだ明確な答えはありません。
フィンランドの観察研究だけを見ると、
で最も低いリスクがみられています。
しかし、これは最適な処方を比較したRCTではありません。
「週7回・20分が健康に最適」と推奨する根拠にはなりません。
また、フィンランド式サウナは一般に乾燥した環境で、日本の施設とは温度や湿度、入り方も異なります。
無理に長時間耐える必要はありません。
体調を見ながら、喉が渇く、めまい、動悸、吐き気などがあればすぐに退出すべきです。
サウナと健康については、思った以上に興味深い医学研究があります。
フィンランドの長期観察研究では、頻繁にサウナを利用する人ほど、
が少ないことが報告されています。
さらに実験研究では、
などが確認されており、短期間のRCTでも運動への上乗せ効果が報告されています。
一方で、冠動脈疾患患者を対象としたRCTでは8週間のサウナで血管機能や血圧が改善しなかった研究もあります。
したがって現時点では、
「サウナは心血管系に有益な可能性があり、非常に興味深い。ただし、サウナに入れば長生きできると証明されたわけではない」
というのが妥当な結論です。
サウナが好きな健康な方が、無理のない範囲で楽しむことには問題ありません。
しかし、サウナを運動・血圧治療・糖尿病治療の代わりにすることはできません。
「健康のために我慢して高温に耐える」より、体調に合わせて安全に利用することの方が重要です。
「サウナに入れば寿命が延びる」と証明されたわけではありません。
フィンランドで42〜60歳の男性2,315人を中央値20.7年追跡した研究では、週4〜7回サウナに入る方は週1回の方と比べて突然心臓死のハザード比が0.37でした。数字としてはかなり大きな差ですが、これはランダム化比較試験ではなく観察研究です。運動習慣、収入、食生活、飲酒、もともとの健康状態など、サウナ以外の違いを完全に取り除くことはできません。
「非常に興味深い関連が報告されている」という段階とお考えください。
明確な答えはまだありません。
フィンランドの観察研究では、週4〜7回・1回20分前後以上でもっとも低いリスクがみられました。ただしこれは「どの入り方が最適か」を比較した試験ではないため、「週7回・20分が健康に最適」と推奨できる根拠にはなりません。
フィンランド式サウナは日本の施設と温度・湿度・入り方が違います。無理に長時間耐える必要はありません。喉が渇く、めまい、動悸、吐き気などがあれば、途中でもすぐに退出してください。
なりません。
サウナでは心拍数が上がり、血管が拡張するため、循環器系への刺激は確かに起こります。しかし筋力、骨格筋量、バランス能力、運動技能、骨への機械的な負荷といった運動による効果は得られません。
8週間のランダム化比較試験では、運動のみの群と比べて「運動+サウナ」の群で収縮期血圧が約8 mmHg低く、最大酸素摂取量や総コレステロールもより改善しました。つまりサウナは「運動に追加するもの」として研究されており、運動の代替ではありません。
日本でよく行われる「サウナ→水風呂→外気浴」というルーティン全体について、心筋梗塞や死亡を減らすことを示した大規模研究はありません。
フィンランドの長期研究が示したのは、あくまでサウナ浴の習慣と心血管死亡・認知症との関連です。冷水に入ると末梢の血管が急激に収縮し、血圧や心臓への負荷が急に変化します。
とくに心血管疾患のある方や血圧の変動が大きい方では、極端な温冷の刺激は慎重にお考えください。
おすすめしません。
フィンランドで1990〜2002年のサウナ内死亡を調べた研究では、亡くなった方の約半数で飲酒が確認されています。古い研究でも、飲酒・高温・脱水・血圧低下・不整脈・意識障害が重なることが事故の重要な背景として指摘されてきました。
飲酒後は体温の調節も乱れやすく、そこにサウナによる血管拡張と脱水が加わります。「少し酔っているだけ」「いつも入っているから大丈夫」とは考えないほうが安全です。
自己判断で始めず、主治医にご相談ください。
古典的なレビューでは、不安定狭心症、最近の心筋梗塞、重症の大動脈弁狭窄症などがサウナを避けるべき状態として挙げられています。一方、安定した狭心症や以前の心筋梗塞の方では、多くの場合サウナは安全とされています。
また、安定した冠動脈疾患のある成人41人を対象に週4回・8週間のサウナを行ったランダム化比較試験では、血管機能や血圧の改善はみられませんでした。「心臓によいらしいから」という理由だけで高温・長時間のサウナを始める根拠は、現時点では十分ではありません。
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森田 知宏(もりた・ともひろ)/ 西新井内科クリニック 院長 医師・医学博士 東京大学医学部卒業。一般内科・訪問診療を担当。最新のエビデンス(科学的根拠)にもとづく診療を心がけています。 ▶ 院長の経歴・研究業績を見る |
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診療判断に代わるものではありません。気になる症状や検査結果がある場合は受診をご検討ください。
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