不整脈と健診で指摘される心電図の異常 ― 様子を見てよいもの・受診したほうがよいもの
不整脈と健診で指摘される心電図の異常 ― 様子を見てよいもの・受診したほうがよいもの
健康診断の結果に「不整脈の疑い」「心電図要精査」「I度房室ブロック」「期外収縮」などと書かれていて、不安になっていませんか。あるいは、ふだんの生活で「動悸(どうき)がする」「脈が飛ぶ感じがする」と気になっている方もいらっしゃるでしょう。
不整脈と一口に言っても、その多くは様子を見ていてよいものです。一方で、ごく一部にはきちんと調べたほうがよいものも混じっています。大切なのは、その見分けと、必要なときに必要な検査を受けることです。この記事では、(1)不整脈とは何か、(2)主な症状、(3)健診の心電図で指摘されやすい所見とその意味、(4)受診の目安、(5)検査、(6)とくに心房細動と生活習慣——を、内科医の視点でわかりやすくご説明します。
心臓は、規則正しい電気信号によって一定のリズムで動いています。このリズムが乱れた状態が不整脈です。脈が速くなるもの(頻脈)、遅くなるもの(徐脈)、飛んだり抜けたりするもの(期外収縮)など、さまざまなタイプがあります。
不整脈はめずらしいものではなく、健康な人でも一日のなかで小さな乱れは起きています。年齢とともに増える傾向があり、加齢は不整脈の最も大きな要因のひとつです。
不整脈があるとき、次のような症状が出ることがあります。
ただし、不整脈は無症状のことも多いのが特徴です。とくに心房細動では、症状をまったく感じない方が一定の割合(およそ10〜40%)でいるとされ、健診や別の検査のついでに偶然見つかることも少なくありません。
健康診断の心電図でよく指摘される所見について、「多くは様子を見てよいもの」と「調べたほうがよいもの」に分けてご説明します。なお、ここでの説明は一般的な目安であり、最終的な判断は心電図そのものや症状・持病をあわせて行います。
心臓の電気の伝わりが少しだけ遅い状態です。多くは治療の必要がなく、経過観察でよいとされています。ほかの心電図異常や症状がなければ、過度に心配する所見ではありません。健診で最もよく見かける「指摘されたけれど基本的に問題ないもの」の代表です。
本来のリズムより少し早いタイミングで脈が打つもので、「脈が飛ぶ」と感じる代表的な原因です。心臓に病気のない方では、多くが良性で心配のいらないものです。健康な人にもごくふつうに見られます。ただし、数がとても多い場合、強い症状がある場合、もともと心臓の病気がある場合には、追加の検査をおすすめすることがあります。
脈そのもののリズムは正常で、回数が少なめ(徐脈)または多め(頻脈)になっている状態です。よく運動する方や若い方では脈が遅めのことがあり、緊張・発熱・貧血・甲状腺の病気・お薬などで速くなることもあります。多くは体の状態を反映した変化ですが、極端な場合や、めまい・失神などの症状を伴う場合は評価が必要です。
電気の通り道の一部が伝わりにくい状態です。とくに右脚ブロックは健康な方にも見られ、単独で症状がなければ多くは経過観察でよいとされます。一方、新しく出てきた左脚ブロックなどは、心臓の状態を確認したほうがよい場合があります。
これは「様子見」とは別に、見つかったらきちんと向き合いたい不整脈です。心房が細かく不規則に動くため脈がばらばらになり、動悸を感じる方もいれば、まったく無症状の方もいます。大切なのは、心房細動があると脳梗塞(脳の血管が詰まる病気)のリスクが高まること。症状の有無にかかわらず、リスクに応じた管理(血液をさらさらにするお薬など)が必要になることがあります。年齢とともに増え、80歳以上ではおよそ10人に1人にみられるとされます。
次のような所見は、心臓の専門的な評価が望ましいものです。健診結果にこれらの記載があれば、放置せず受診してください。
次のような場合は、ためらわず受診(状況により救急要請)をしてください。
不整脈は、症状の強さが必ずしも重症度を表すとは限りません。「症状が軽いから大丈夫」「症状が強いから重い」と単純には言えないため、気になるときは一度ご相談ください。
不整脈の評価では、まず12誘導心電図を行います。あわせて、血液検査で貧血・電解質・甲状腺機能などをチェックします(甲状腺の病気は不整脈の隠れた原因になることがあるためです)。
動悸のように症状がときどきしか出ない不整脈では、受診したときには治まっていて、その場の心電図では捉えられないことがよくあります。そこで役立つのが、長時間記録できるホルター心電図(24時間心電図)です。「症状が出たそのとき」の波形を捉えられると診断に大きく近づきます。心構造の評価が必要な場合は心エコー検査を、より専門的な検査・治療が必要な場合は循環器内科などへご紹介します。
心房細動は、はじめのうちは発作的に起こり、出たり治まったりをくり返すことが多い不整脈です。症状が出ても短時間で治まったり、まったく症状がなかったりするため、「いざ受診したときには治まっていて、心電図に異常が出ない」ということが起こります。
ここで問題になるのが「記録できる時間の短さ」です。健康診断の心電図はほんの1分ほど、長く記録するホルター心電図でも24時間です。その間にたまたま不整脈が出なければ、見つけられません。一方、スマートウォッチは身につけているあいだ、ずっと脈をチェックし続けられるのが大きな強みです。とくに心房細動は、こうした機器で検出しやすい不整脈とされています。
信頼性を確かめる大規模な研究も行われています。Apple Watchを使ったApple Heart Study(約42万人)やFitbitを使ったFitbit Heart Study(約46万人)といった数十万人規模の研究で、スマートウォッチが未診断の心房細動に気づくきっかけになりうることが示されました。さらに、26の研究(約1万7千人)をまとめた最近の解析でも、心房細動を見つける精度(感度・特異度とも90%台)が高いと報告されています。こうしたことから、当院ではスマートウォッチを、心房細動の早期発見に役立つ有用な手段のひとつと考えています。
ただし、いくつか知っておきたい点があります。スマートウォッチはあくまで「気づくためのきっかけ(スクリーニング)」であり、確定診断ではありません。「心房細動の可能性」と通知が出たら、自己判断せず受診し、医療機関の心電図で確かめることが大切です(診療ガイドラインでも、最終的な診断には医師による心電図の確認が必要とされています)。また、すでに心房細動と診断された方の管理や、心房細動以外の不整脈の評価には向きません。「通知は出ないけれど症状が気になる」という場合も、どうぞご相談ください。
心房細動については、近年「生活習慣・危険因子の管理」が治療と同じくらい重視されています。これらの取り組みは、お薬やカテーテル治療と同等以上の効果を示すことがあると報告されています。とくに次のような点が大切です。
なお、コーヒーなどのカフェインは、1日数杯程度であれば心房細動のリスクには影響しないとされています。また、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)は心房細動の「治せる原因」のひとつで、甲状腺の治療によって不整脈が落ち着くことがあります。
不整脈、とくに心房細動は年齢とともに増えていきます。高齢の方では症状がないまま心房細動が起きていることが多く、気づかないうちに脳梗塞のリスクが高まっていることがあります。だからこそ「見つけて、脳梗塞を防ぐ」ことが大切です。ときどきご自身で手首の脈をはかり、脈がばらばらに乱れていないかを確かめてみるのも、早期発見の手がかりになります。気になる乱れがあれば受診をご検討ください。
西新井内科クリニックでは、動悸や脈の乱れが気になる方、健診で不整脈・心電図異常を指摘された方に対して、問診・12誘導心電図・ホルター心電図(24時間心電図)・採血(貧血や甲状腺機能などのチェック)による評価を行います。心房細動など継続的な管理が必要な不整脈のフォローにも対応します。
そのうえで、心エコー検査やカテーテルアブレーション、ペースメーカーなど、より専門的な検査・治療が必要と判断される場合は、循環器内科などの専門医療機関へご紹介します。
「健診で不整脈と書かれて心配」「I度房室ブロックや期外収縮と言われたが大丈夫か知りたい」「動悸が続く・繰り返す」という方は、どうぞお気軽にご相談ください。
不整脈・健診の心電図でお困りの方へ ― 西新井内科クリニック(足立区西新井本町)。Web予約はこちら、またはお電話(03-3840-4146)でご予約ください。午後は比較的予約が取りやすくなっています。
多くは治療の必要がなく、経過観察でよいとされています。ほかの心電図異常や症状がなければ、過度に心配する所見ではありません。気になる場合は一度ご相談いただくと安心です。
心臓に病気のない方では、多くが良性で心配のいらないものです。健康な人にもよく見られます。ただし、数がとても多い、動悸が強い、もともと心臓の病気がある、といった場合は追加の検査をおすすめすることがあります。
不整脈は「そのとき」だけ出ることが多く、受診時に治まっていると通常の心電図では捉えられないことがあります。症状が続く・繰り返す場合は、ホルター心電図(24時間心電図)などで、症状が出たときの波形を捉える検査が役立ちます。
ウェアラブル機器は早期発見の補助として有用です。ただし確定診断にはなりませんので、一度受診して心電図で確認することをおすすめします。
まずは内科で心電図・採血による評価ができます。ホルター心電図も当院で対応可能です。専門的な検査・治療(心エコー、カテーテルアブレーション、ペースメーカーなど)が必要な場合は、循環器内科へご紹介します。
脳梗塞(脳の血管が詰まる病気)のリスクが高まることが大きな問題です。症状がなくても、リスクに応じて血液をさらさらにするお薬などの管理が必要になることがあります。
とくに心房細動は、血圧・体重・お酒・睡眠時無呼吸・糖尿病などの管理によって、発症や再発のリスクを下げられることがわかっています。生活習慣の改善は、お薬による治療と並んで大切な柱です。
本記事は、以下のレビュー論文・診療ガイドラインにもとづいて作成しています。
|
森田 知宏(もりた・ともひろ)/ 西新井内科クリニック 院長 医師・医学博士 東京大学医学部卒業。一般内科・訪問診療を担当。最新のエビデンス(科学的根拠)にもとづく診療を心がけています。 ▶ 院長の経歴・研究業績を見る |
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診療判断に代わるものではありません。気になる症状や健診結果がある場合は受診をご検討ください。最終更新:2026年6月。記載の病名・数値・治療等は、ガイドライン改訂などにより変わる場合があります。
TOP