スギ花粉症の舌下免疫療法

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スギ花粉症の舌下免疫療法(シダキュア)

スギ花粉症の舌下免疫療法

毎年2月になると、くしゃみ・鼻水・目のかゆみで仕事も勉強も手につかない。飲み薬や点鼻薬でなんとかしのいでいるけれど、できれば「花粉症そのもの」を何とかしたい——。そんな方に知っていただきたいのが、スギ花粉症の舌下免疫療法(ぜっか めんえきりょうほう)です。

舌下免疫療法は、症状を一時的に抑える対症療法とは違い、アレルギーの原因に体を少しずつ慣らして、花粉症のアレルギー反応を起こしにくくすることを目指す治療です。数年かけて続けることで、飲み薬・点鼻薬の量を減らせる方が多く、治療を終えた後も効果が続くことが期待できます。

この記事では、(1)舌下免疫療法とはどんな治療か、(2)どのくらいの効果が期待できるか、(3)向いている方・始められない方、(4)治療の進め方と始める時期、(5)費用——を順にご説明します。

スギ花粉症の舌下免疫療法とは

舌下免疫療法は、アレルギーの原因物質(アレルゲン=ここではスギ花粉のエキス)を、ごく少量から毎日少しずつ体に取り入れて、体を慣らしていく治療です。アレルゲンを使って体質に働きかける治療をまとめて「アレルゲン免疫療法」と呼び、舌の下に薬を含ませて行うものが舌下免疫療法です。

日本では、スギ花粉症に対して「シダキュア舌下錠」という保険適用の舌下錠が使われています。1日1回、舌の下で溶かして服用する小さな錠剤で、注射ではありません。

花粉症のお薬には、大きく2つの考え方があります。

  • 対症療法(抗ヒスタミン薬の飲み薬、点鼻薬・点眼薬など)…出ている症状を抑える。飲んでいる間は効くが、やめれば元に戻る。
  • 免疫療法(舌下免疫療法)…アレルギーを起こす体の反応そのものに働きかける。効果が出るまで時間はかかるが、治療を終えた後も効果が続くことが期待できる

飲み薬や点鼻薬で「シーズン中をなんとか乗り切る」のではなく、数年単位で花粉症の体質に向き合いたい方のための治療、とイメージしていただくと分かりやすいと思います。

どのくらいの効果が期待できる?

舌下免疫療法は、国内外の数多くの臨床試験で、くしゃみ・鼻水・鼻づまりといった症状や、飲み薬・点鼻薬の使用量を減らす効果が確かめられています。多数の試験をまとめた研究でも、使わなかった場合と比べて、症状スコアと薬の使用スコアが減ることが示されています。

とくに大切なのは、治療をやめた後も効果が続くことが期待できる点です。お薬で症状を抑える対症療法と違い、免疫療法はアレルギーの反応そのものを和らげる治療で、長期的な体質の改善をねらえます。国際的なガイドラインでは、こうした長期的な効果を得るために最低3年間は治療を続けることが強くすすめられています。

ただし、注意していただきたいこともあります。

  • 効果には個人差があります。多くの方で症状が和らぎますが、効果の程度はさまざまで、十分な効果を実感できない方もいます。「必ず治る」治療ではありません。
  • 効果が出るまでに時間がかかります。飲んですぐ効くものではなく、数か月〜シーズンを重ねるなかで、少しずつ実感されていくことが多い治療です。
  • シーズン中は、飲み薬・点鼻薬を併用することもあります。免疫療法を続けながら、必要に応じて対症療法を組み合わせます。

こんな方に向いています

次のような方は、舌下免疫療法を検討する価値があります。

  • 毎年スギ花粉症の症状がつらく、飲み薬や点鼻薬だけでは十分にコントロールできない
  • お薬の副作用(眠気など)やコスト、長く飲み続けることを避けたい
  • 受験・仕事・大事なイベントなど、毎年この時期だけは何とかしたい事情がある方
  • その場しのぎではなく、数年かけて体質から改善することを希望する
  • 注射(皮下免疫療法)は避けたい方。舌下なら自宅で続けられます
  • 注射を怖がるお子さん(5歳以上が対象)

治療を始める前提として、その症状が本当にスギ花粉によるアレルギーかどうかを、血液検査(スギ特異的IgE抗体)などで確かめておくことが必要です。問診だけで自己判断せず、まずは検査で確認します。他のアレルギー(ダニ・ハウスダストなど)が隠れていないかも、あわせて調べることがあります。

始められない方・注意が必要な方

安全に行うために、次のような方は治療を始められない、または慎重な判断が必要です。問診と診察で必ず確認します。

  • 原則として始められない…コントロールの悪い気管支ぜんそくがある/妊娠中に新たに始める場合/重い病気で全身状態が不安定な場合 など
  • 慎重に判断する…β(ベータ)遮断薬を飲んでいる/過去に強いアレルギー反応(アナフィラキシー)を起こしたことがある/免疫の働きを抑える病気・お薬がある/悪性腫瘍や自己免疫の病気がある/好酸球性食道炎の既往 など
  • その日は服用を控える…口の中に傷・口内炎・抜歯後の傷がある/重い口の中の炎症や感染がある/体調が悪い・発熱しているとき など
  • 対象年齢…シダキュア舌下錠は5歳以上が対象(年齢の上限はありません)

※上記は代表的な目安です。持病やお薬の内容によって判断は変わります。お薬手帳をお持ちのうえ、診察時にご相談ください。とくにぜんそくのある方は、開始前・服用前にぜんそくの状態を確認します。

治療の進め方と「始める時期」

舌下免疫療法には、「始められる時期」が決まっているという大切なポイントがあります。順を追ってご説明します。

  1. まず検査・診断。血液検査などで、スギ花粉症であることを確認します。あわせて、ぜんそくや持病・飲んでいるお薬の確認、治療の説明を行います。
  2. 開始時期に注意(飛散期は始められません)。スギ花粉が飛んでいる時期は、治療を開始できません。花粉が飛んでいない時期(おおむね6月〜12月ごろ)に開始します。効果が出るまでに数か月かかるため、来シーズンに備えるなら、遅くとも12月ごろまでに始めるのがおすすめです。
  3. 最初の1錠はクリニックで。初回はクリニックで服用し、その後約30分、院内で経過を観察します(まれな強い反応に備えるためです)。問題がなければ、翌日からはご自宅で続けます。
  4. 2日目以降は自宅で1日1回。はじめの1週間は少なめの量、2週目以降は維持量を、毎日1回服用します。舌の下に1分間保持してから飲み込み、その後5分間はうがい・飲食を控えます。服用の前後2時間は、激しい運動・入浴・飲酒を避けてください。
  5. 3〜5年続けます。長期的な効果を得るため、3〜5年の継続が目安です。定期的に受診し、効果や副作用を確認しながら進めます。

※用量は、はじめの1週間が2,000 JAU、2週目以降が5,000 JAU(維持量)です(JAUはアレルゲンの量を表す単位)。飲み忘れたときの対応など、続け方のコツも受診時にご案内します。

副作用と安全性

舌下免疫療法の副作用は、薬が触れる口の中やのど・耳のかゆみ、口や唇の腫れ、のどの違和感といった、局所的なものが中心です。これらは比較的よくみられますが、多くは軽く、数分〜数時間でおさまります。ただし、ごくまれに重い全身のアレルギー反応(アナフィラキシー)が起こる可能性もあります。初回は院内で服用いただき経過を観察します。
口内炎や抜歯後などで口の中が傷ついている状態のとき、体調不良のときは服用を控える・相談するなど、安全に続けるための注意点もお伝えします。

費用(保険適用)

スギ花粉症の舌下免疫療法は保険診療です。初診時の診察・血液検査と、その後の毎月のお薬代・診察料がかかります。

  • 毎月のお薬代…3割負担の方で、おおよそ月1,000〜1,500円程度が目安です(診察料は別途)。
  • 検査(血液検査)…初回に行います。費用は調べる項目数によって変わります。

※金額は目安で、検査内容・診察料・薬価改定・自己負担割合によって変わります。正確な費用は受診時にご確認ください。

ダニなど、ほかのアレルギーがある場合

舌下免疫療法には、スギ花粉用(シダキュア)のほかに、ダニ(ハウスダスト)用のお薬もあります。スギ花粉症とダニのアレルギーを両方お持ちの方は、開始時期をずらして両方の治療を行うこともあります。気になる方は、診察時にご相談ください。

よくあるご質問

Q. すぐに効きますか?

飲んですぐ効く治療ではありません。効果が現れるまでに数か月かかり、シーズンを重ねるなかで実感されることが多い治療です。最も大きな効果は、数年続けたあとに期待できます。

Q. いつから始めればよいですか?

スギ花粉が飛んでいる時期(おおむね2〜5月)は始められません。花粉が飛んでいない時期に開始します。来シーズンに備えるなら、効果が出るまでの時間を考えて、6月から12月ごろまでに始めるのがおすすめです。

Q. どのくらいの期間続けるのですか?

長期的な効果を得るために、3〜5年の継続が目安です。途中で中断すると効果が十分に得られないことがあります。

Q. 飲み薬や点鼻薬はやめられますか?

多くの方でお薬の使用量を減らせますが、効果には個人差があります。シーズン中は、必要に応じて飲み薬・点鼻薬を併用することもあります。やめられるかどうかは、効果をみながら一緒に判断します。

Q. 子どもでもできますか?

シダキュア舌下錠は5歳以上が対象です。注射が苦手なお子さんにも続けやすい治療です。

Q. 妊娠中・授乳中でも始められますか?

妊娠中に新たに始めることは、原則として行いません。治療中に妊娠した場合の続け方は、医師にご相談ください。

Q. 毎日忘れずに飲まないといけませんか?

原則として毎日1回続けます。飲み忘れたときの対応は受診時にご案内します。安定して続けることが効果につながります。

Q. オンライン診療だけで始められますか?

最初の診断のための血液検査と、初回の服用(院内で約30分観察します)は来院が必要です。その後の継続の相談については、状況に応じてご案内します。

まとめ

スギ花粉症の舌下免疫療法は、症状をその場で抑える対症療法とは違い、アレルギーの起こりにくい体質へ少しずつ近づけていく治療です。効果には個人差があり、数年の継続が必要ですが、飲み薬・点鼻薬を減らせる方が多く、治療を終えた後も効果が続くことが期待できます。

始められる時期が限られているため(花粉が飛んでいない時期に開始)、「来シーズンこそ何とかしたい」という方は、夏〜秋のうちに一度ご相談ください。まずは血液検査で、スギ花粉症かどうかを確かめるところから始められます。

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西新井内科クリニック(足立区西新井本町)。Web予約はこちら、またはお電話(03-3840-4146)でご予約ください。

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参考文献

本記事は、以下のガイドラインおよび臨床研究にもとづいて作成しています。

  1. 日本アレルギー学会・日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会「鼻アレルギー診療ガイドライン—通年性鼻炎と花粉症」
  2. シダキュア舌下錠2,000 JAU/5,000 JAU 添付文書(鳥居薬品)
  3. Gurgel RK, et al. Clinical Practice Guideline: Immunotherapy for Inhalant Allergy. Otolaryngol Head Neck Surg. 2024;170 Suppl 1:S1-S42.
  4. Seidman MD, et al. Clinical Practice Guideline: Allergic Rhinitis. Otolaryngol Head Neck Surg. 2015;152(1 Suppl):S1-43.
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  11. Bernstein JA, et al. Allergic Rhinitis: A Review. JAMA. 2024;331(10):866-877.

筆者情報

本記事は西新井内科クリニック院長 森田知宏(内科)によるものです。詳しい経歴は医師紹介ページをご覧ください。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診断・治療に代わるものではありません。治療の適応や費用は、診察のうえで判断します。

最終更新:2026年6月。記載の用量・スケジュール・費用等は変更される場合があります。

アレルギーの原因を詳しく調べたい方は、1回の採血で39項目を調べられる「アレルギー検査(View39)の結果の見方」もご参照ください。

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