健康診断でHbA1c・血糖値が高いと言われたら―糖尿病の基準と境界型の対策
健康診断でHbA1c・血糖値が高いと言われたら―糖尿病の基準と境界型の対策
健康診断の結果表で、「血糖値」「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」の欄に再検査や要受診のマークがついていませんでしたか。
「甘いものを少し控えているし、体調も悪くないから大丈夫」「痛くもかゆくもないから、来年の健診まで様子を見よう」と受診を先延ばしにしてしまう方は非常に多くいらっしゃいます。
しかし、糖尿病は「自覚症状がまったくないまま、全身の血管を静かに傷つけ続ける病気」です。喉が渇く、尿の回数が増える、急に体重が落ちるといった典型的な症状が現れたときには、すでに病気が進行していることが少なくありません。
この記事では、血糖値とHbA1cの違い、糖尿病の診断基準、「境界型(糖尿病予備群)」の重要性、そして内科での再検査の流れについて解説します。
健診では「血糖値」と「HbA1c」の両方が測定されることが一般的です。これらは似ているようで、見ている時間軸がまったく異なります。
| 項目 | 何を見ているか | 特徴と注意点 |
|---|---|---|
| 血糖値(空腹時/随時) | 採血した「その瞬間」の血液中のブドウ糖濃度 | 直前の食事や運動、緊張、採血時間によって大きく変動します。健診前夜から絶食した場合は「空腹時血糖」となります。 |
| HbA1c(NGSP値) | 赤血球のヘモグロビンに糖が結合した割合(%) | 赤血球の寿命は約120日であるため、直前の食事に左右されず、「過去1〜2か月の平均的な血糖状態」を正確に反映します。 |
健診当日の朝食を抜いて一時的に血糖値が下がっていても、過去2か月に高血糖が続いていればHbA1cは高くなります。そのため、現在の糖尿病診療ではHbA1cが最も信頼性の高い指標として使われています。
日本糖尿病学会では、糖尿病の診断基準を以下のように定めています。
| 分類 | 空腹時血糖 | HbA1c | 状態の説明と対応方針 |
|---|---|---|---|
| 正常域 | 110 mg/dL 未満 | 5.5 % 以下 | 血糖コントロールは良好です。年1回の定期健診を継続しましょう。 |
| 境界型(糖尿病予備群) | 110 〜 125 mg/dL | 5.6 〜 6.4 % | 将来の糖尿病リスクが非常に高い状態です。今生活改善を行えば正常に戻せる可能性が最も高い段階です。 |
| 糖尿病型 | 126 mg/dL 以上 | 6.5 % 以上 | 別日の再検査でも確認されると「糖尿病」と確定診断されます。速やかな治療介入が必要です。 |
※随時血糖値(食後など)が200 mg/dL以上ある場合も糖尿病型と判定されます。健診の1回だけで直ちに確定するわけではなく、内科で別日に再検査を行い、血糖値とHbA1cの組み合わせで総合的に診断します。
糖尿病の本質は、「血糖値が高いこと」そのものではなく、「高血糖によって全身の血管がボロボロになっていくこと」にあります。
動脈硬化を急速に進めるため、糖尿病の方は正常な方に比べて脳梗塞や心筋梗塞を起こすリスクが約2〜3倍高くなります。また、足の動脈が詰まる閉塞性動脈硬化症(ASO)の原因にもなります。
健診で「HbA1cが 5.8% や 6.2% だった」という境界型の方は、「まだ本格的な糖尿病ではないから大丈夫」と油断してしまいがちです。
しかし、境界型の段階でも食後高血糖(血糖スパイク)が起きており、動脈硬化はすでに始まっています。
一方で、境界型こそが最も効果的に糖尿病の発症を防ぐことができるゴールデンタイムでもあります。この段階で体重を3〜5%減らし、食事や運動の習慣を見直すことで、糖尿病への移行を大幅に防ぐことができます。
重篤な合併症を防ぐためにも、先送りせずに受診することが何より大切です。
当院では、患者様一人ひとりのライフスタイルに合わせた無理のない血糖管理を提案しています。
「健診結果の見方がよくわからない」「再検査を受けるように言われたけれど不安」という方は、健診結果票をお持ちのうえお気軽にご相談ください。
必ずしも一生飲み続けなければならないわけではありません。早期に受診し、生活習慣の改善や減量によって膵臓のインスリン分泌能が回復すれば、薬の量を減らしたり、完全に中止して食事・運動療法のみで良好な数値を維持できるようになる方も多くいらっしゃいます。放置して膵臓が疲弊しきってしまう前に治療を始めることが大切です。
前日の食事内容で大きく変動するのは「血糖値」であり、「HbA1c」は過去1〜2か月の平均値ですので、前日1日の食事だけで急上昇することはありません。HbA1cが高かったということは、ここ数か月にわたって慢性的に血糖値が高かった証拠ですので、しっかり再検査を受ける必要があります。
血糖値スパイクとは、空腹時には正常なのに、食後にだけ血糖値が200 mg/dL近くまで急激に跳ね上がる現象です。一般的な健診は朝食抜きの空腹時採血で行われるため、空腹時血糖値だけでは血糖値スパイクを見落とすことがあります。HbA1cが高めの方や、食後に強い眠気・だるさが出る方は、食後血糖の評価が必要です。
健診の数値が気になる方へ
当院では、健診で指摘された数値の再検査から、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの治療までを行っています。健診結果票をお持ちください。
![]() |
森田 知宏(もりた・ともひろ)/ 西新井内科クリニック 院長 医師・医学博士 東京大学医学部卒業。一般内科・訪問診療を担当。最新のエビデンス(科学的根拠)にもとづく診療を心がけています。 ▶ 院長の経歴・研究業績を見る |
本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診療判断に代わるものではありません。気になる症状や検査結果がある場合は受診をご検討ください。最終更新:2026年9月。記載の制度・費用等は変更される場合があります。
TOP