健康診断で腎機能低下を指摘されたら

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健康診断で腎機能低下(クレアチニン・eGFR)を指摘されたら―CKDのサインと再検査

健康診断で腎機能低下を指摘されたら

健康診断の結果票に「血清クレアチニンが高い」「eGFRが低い」と書かれていても、「普段と何も変わらず体調も良いし、何を意味するのかよくわからない」とそのままにしていませんか。

腎臓は、血液中の老廃物をろ過して尿として体外へ排出する重要な臓器です。しかし肝臓と同様に「沈黙の臓器」であり、機能がかなり低下するまで痛みやむくみなどの症状が出にくいのが大きな特徴です。

「症状が出てから」受診したのでは手遅れになってしまうこともあります。健診で腎機能の低下を指摘された段階こそが、大切な腎臓を守る絶好のチャンスです。

この記事では、クレアチニンとeGFRの正しい見方、慢性腎臓病(CKD)の診断基準、尿蛋白の重要性、そして内科で行う再検査について解説します。

eGFRとクレアチニンは何を表している?

健診の血液検査で腎機能を評価する際、中心となるのが「血清クレアチニン」「eGFR(推算糸球体濾過量)」です。

1. 血清クレアチニンとは

クレアチニンは、筋肉が活動した後にできる老廃物の一種です。血液によって腎臓へ運ばれ、尿中に排出されます。
腎臓のろ過機能が落ちると体外へうまく捨てられなくなり、血液中のクレアチニン濃度が高くなります。

2. eGFR(推算糸球体濾過量)とは

血清クレアチニン値は年齢・性別によって基準が異なるため、これらを計算式に当てはめて「腎臓が1分間にどれだけの血液をきれいにできるか(ろ過能力)」を推定したのがeGFRです。
単位は mL/分/1.73m² で表され、おおむね健康な若い方の腎機能を100点とすると「あなたの腎臓の働きは何点くらいか」を示す目安になります。

eGFR値の目安 ステージ 評価と内科での対応方針
90 以上 正常〜高値(G1) 腎機能は良好です。尿蛋白がなければ経過観察となります。
60 〜 89 正常または軽度低下(G2) 加齢に伴う自然な変化の範囲であることも多いですが、尿蛋白がある場合は精査が必要です。
45 〜 59 軽度〜中等度低下(G3a) 3か月以上持続すればCKD(慢性腎臓病)に該当します。生活習慣病管理と再検査が必須です。
30 〜 44 中等度〜高度低下(G3b) 心血管疾患や腎機能悪化のリスクが高まります。厳格な治療管理が必要です。
30 未満 高度低下〜末期(G4・G5) 腎臓専門医への紹介と集学的な治療連携が不可欠な段階です。

一度の健診だけで「慢性腎臓病」と決まるわけではありません

日本腎臓学会の診療ガイドラインでは、慢性腎臓病(CKD)の定義を以下のように定めています。

【CKDの診断基準】

① 尿蛋白などの腎障害を示唆する所見、または

② eGFRが 60 mL/分/1.73m² 未満

のいずれか、または両方が「3か月以上持続する」こと

つまり、健診の採血で一度eGFRが58だったからといって、直ちに一生治らない腎不全と確定するわけではありません。

クレアチニン値が一時的に変動する主な要因

  • 脱水:夏場の発汗、水分の摂取不足、下痢などがあると一時的に血液が濃縮し、腎血流が落ちてクレアチニンが高くなります。
  • 筋肉量・運動:筋トレを日常的に行っている方や体格の良い方は、筋肉由来のクレアチニン産生が多いため、見かけ上eGFRが低めに出ることがあります。逆に痩せ型の高齢者では実際より良く出る傾向があります。
  • 食事・薬剤:前日に大量の肉類を食べた場合や、一部の胃薬・降圧薬の影響を受けることがあります。

そのため、まずは内科で十分な水分補給を行った状態で数週間〜3か月後に再検査を行い、数値の持続性を確認することが重要です。

eGFRより重要?見落とせない「尿蛋白」のサイン

腎臓の健康を判断する上で、eGFRと同じかそれ以上に重要なのが「尿蛋白(または微量アルブミン尿)」です。

腎臓のろ過フィルター(糸球体)が壊れてくると、本来は血液中に保たれるべき大切なタンパク質が尿中に漏れ出してきます。
日本腎臓学会のガイドラインでも、eGFRが保たれていても尿蛋白が出ている人は、将来心筋梗塞・脳卒中を起こすリスクや透析になるリスクが跳ね上がることが明らかにされています。

特に、以下のような基礎疾患をお持ちの方は腎機能低下が進みやすいため要注意です。

  • 高血圧:毛細血管の塊である腎臓に高い圧力がかかり続け、血管が硬化してろ過機能が壊れます(腎硬化症)。
  • 糖尿病:高血糖により糸球体の血管壁が障害され、尿蛋白(アルブミン)が漏れ出します(糖尿病性腎症)。
  • 高尿酸血症(痛風):尿酸結晶が腎臓に沈着して炎症を起こします。

健診の「軽度のeGFR低下」や「尿蛋白(+)」の段階で介入することが、将来の透析を防ぐことに直結します。

内科での再検査と治療の流れ

当院では、健診で腎機能異常を指摘された方に対し、以下のような総合的なアプローチを行います。

  1. 持続性の確認(再検査)
    • 血清クレアチニン、eGFR、尿素窒素、電解質(カリウム・ナトリウムなど)の再測定
    • 尿蛋白・尿潜血の検査、必要に応じて「尿蛋白定量(クレアチニン換算)」や「尿中微量アルブミン検査」の実施
  2. 血圧・生活習慣病の厳格なコントロール
    • 腎臓を守るための第一歩は「血圧管理」です。家庭血圧を測っていただき、『高血圧管理・治療ガイドライン2025』の降圧目標である診察室血圧130/80 mmHg未満・家庭血圧125/75 mmHg未満を目安に管理します(ふらつきなどの過降圧が出ないよう、お一人おひとりの状態をみながら調整します)。
    • 糖尿病や脂質異常症がある場合は、腎保護作用が確認されている最新の治療薬(SGLT2阻害薬やRAS阻害薬など)の活用を検討します。
  3. 生活習慣・服薬の見直し
    • 1日6g未満を目指す減塩指導
    • こまめな水分補給(脱水予防)
    • 市販の鎮痛薬(ロキソプロフェン等のNSAIDs)の頻用は腎機能を急激に悪化させることがあるため、服薬内容をチェック・調整します。
  4. 専門医連携
    • eGFRが30未満の場合や、尿蛋白が持続的に高度な場合、急激な機能低下が見られる場合は、地域の基幹病院・腎臓内科専門医と速やかに連携します。

西新井内科クリニックでの受診案内

「健診で腎臓の数値にチェックがついた」「何科に行けばいいのかわからない」という方は、まずは一般内科・生活習慣病を担当する当院へご相談ください。過去の健診結果をお持ちいただければ、これまでの推移を踏まえて丁寧にご説明します。

  • お持ちいただくもの:健康診断の結果票、お薬手帳、血圧手帳(お持ちの方)、保険証・マイナ保険証
  • ご予約:Web予約をご利用いただくとスムーズです。

よくあるご質問

Q. 一度落ちてしまったeGFRは、治療すれば元の100点に戻りますか?

慢性的に線維化して失われた腎組織は、残念ながら完全に元通りに戻すことは困難です。しかし、適切な血圧・血糖の管理や生活習慣の見直しを行うことで、機能低下のスピードを極めて緩やかにし、一生透析にならない状態を維持することは十分に可能です。また、脱水などが原因の一時的な低下であれば、再検査で回復することもよくあります。

Q. 腎臓のために毎日たくさん水を飲んだほうがいいですか?

脱水は腎機能を悪化させるため、喉が渇く前にこまめに水分をとることは大切です。ただし、腎臓病が進行して尿が出にくくなっている方や心臓病を合併している方が自己判断で極端な水分を摂ると、心不全や強いむくみの原因になります。ご自身に適した適切な水分摂取量は診察時にご確認ください。

Q. 筋トレをしているとクレアチニンが高くなると聞きましたが、本当ですか?

はい、日常的に激しいウエイトトレーニングを行っている方やプロテインを多量に摂取している方は、筋肉からの老廃物産生が多くなるため、腎臓自体が健康であっても血清クレアチニンが高く(eGFRが低く)出ることがあります。筋肉量の影響を受けない「血清シスタチンC」という別の指標を測定することで、より正確な腎機能の評価が可能です。

健診の数値が気になる方へ

当院では、健診で指摘された数値の再検査から、高血圧・糖尿病・脂質異常症などの治療までを行っています。健診結果票をお持ちください。

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参考文献


著者情報

西新井内科クリニック 院長 森田知宏 森田 知宏(もりた・ともひろ)/ 西新井内科クリニック 院長 医師・医学博士
東京大学医学部卒業。一般内科・訪問診療を担当。最新のエビデンス(科学的根拠)にもとづく診療を心がけています。
▶ 院長の経歴・研究業績を見る

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、個別の診療判断に代わるものではありません。気になる症状や検査結果がある場合は受診をご検討ください。最終更新:2026年9月。記載の制度・費用等は変更される場合があります。

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